約 82,690 件
https://w.atwiki.jp/sinsougou/pages/49.html
前ページ次ページローゼンメイデン 小ネタ集 レイ「今戻った……。すまん、今日はシンも怪我をしているから何時もの激しいのは無しだ」 水銀燈「おかえり……って、シン! どうしたのその怪我は!?」 シン「ああ、ちょっと戦闘でな。大丈夫、額が少し切れただけだ。 やっぱりインドの戦場はかなり厳しいな。数がうじゃうじゃ居る」 水銀燈「額って頭から血が滲んでるじゃない!……大丈夫なの?」 レイ「コーディネイターは治癒能力が高いし、この位なら数日で傷は塞がる」 薔薇水晶「……貴女随分取り乱すのね」 水銀燈「(かあああっ)おだまり! 別に心配しているんじゃないわ! ただ、主が怪我をしてしまったら何かと大変だし それが気になってアリスゲームに集中出来なくなるから他人事じゃないのよ!」 レイ「それを簡潔に言うと心配と言うんだ」 水銀燈「なんですって! 違うわ!」 シン「あーー、もぅ。解った解った。水銀燈、前の主が如何だったか知らないが 俺たちは軍人だ。戦場に出れば怪我なんて幾らでもするし、死ぬ事もある」 水銀燈「死…死ぬ。死ぬのは」 薔薇水晶「……そこでブロックワードとかダメ。キャラが違う」 水銀燈「おだまり!(ちぃっと舌打ち)」 レイ「そんなに心配なら着いていけば良いだろう。此処で騒がれても困る」 シン「……おいおい、そんな簡単に」 シン「……で」 水銀燈「なぁに?」 シン「何でお前がコックピットに居るんだ」 水銀燈「着いて来たのよぉ。幻じゃないわぁ」 シン「いや、それは見て解る」 水銀燈「なら良いじゃない」 シン「良くない!」 水銀燈「なんで?」 シン「それは、その……危ないし」 水銀燈「マスターとは一蓮托生よぉ。貴方が死んだら私が困るものぉ」 シン「それはそうなんだろうけど……ええいぃ、何と言うかその……邪魔」 水銀燈「なんですって! 人が…いや、私は人形だけど 貴女がイザという時助けられる様に乗り込んで上げたのに」 シン「……いや、心配なのは解るけどさ」 水銀燈「(かぁああっ)心配してなんてしていないわ」 シン「ああ、もぅ解った。だから、さっさと降り――」 メイリン「準備できました。インパルス発進どうぞ」 シン「え、ちょ、今水銀燈をおろ……ってうわぁあああーーっ」 水銀燈「や、そんな抱き締めても」 シン「違う、コレはGだ! 今すごい速度で飛んでるから引力が!」 水銀燈「??? 何を言って……やっ、そんなにされたら潰れちゃ」 シン「だ、大丈夫か!」 水銀燈「んっだめ …もっとゆっくり……優しくしてくれないと壊れちゃ……」 シン「いや、スピードはコレ以上落とすと落ちる! ちょっと待って……って敵が!」 水銀燈「きゃああっそんな持っていかれると」 シン「しっかり捕まって……くっ、相手もやる!」 水銀燈「んっ、イヤァ目が回ってきて……」 シン「普段飛んでるんだろ!」 水銀燈「そんなしょっちゅうアクロバットな事はしてないわぁ!」 シン「くっ、モロに被弾……って、熱上昇させる弾か!(アーマードコア?)」 水銀燈「シン……あ、熱いの……くぅっ」 シン「パイロットスーツも着てないから!? すぐ終わらせてやる。我慢してくれ!」 水銀燈「やっ、息も暑くて……」 シン「うぉぉぉぉおぉおおおおっっ!!!」 ―戦闘終了後 レイ「……凄かったな」 シン「ん? そうかいつもどおりと言うかむしろヘマってたけど」 レイ「いや、通信が」 シン「へ?」 レイ「敵味方全員に聞こえてたぞ。皆ラブコメに吹いてる最中に お前が落としていった居たがあれは新しい戦術……ではないよな?」 シン「(青ざめて首を横にフルフル)……マジで? 何処から」 レイ「最初から。しかもメイリンが取っていて皆、聞いてるぞ」 シン「……orz」 薔薇水晶「……激しい」 水銀燈「じゃ、ジャンクにしてやるわ! そんなものぉ」 薔薇水晶「……貴女、コンピューターって奴が弄れるの?」 水銀燈「知らなくても壊せるわ!」 薔薇水晶「モノを壊したらシンが怒る」 水銀燈「……じゃあ、どうすればいいのよぉ! こんなの流されたらもう」 薔薇水晶「……お嫁さんで永久就職って逃げ道とか」 水銀燈「(赤面)そんなの出来たら苦労しないわ!」 薔薇水晶「……したいの?」 水銀燈「(超赤面で頭から湯気が出て)……くっ!!」 薔薇水晶「……否定しないのね」 水銀燈「!!! お、おだまりぃ!(と言いつつ脱兎で逃げ)」 前ページ次ページローゼンメイデン 小ネタ集
https://w.atwiki.jp/ifrozenteacherss/pages/335.html
水銀燈先生 水銀燈、JUMとの遭遇 水銀燈×薔薇水晶 薔薇水晶&水銀燈と卒業式 実技試験の前のひととき 蒼星石×水銀燈の百合 病室の木の葉 とある男子生徒の事情 水銀燈の補習 水銀燈の胸 水銀燈と屋上 進路相談:水銀燈の場合 交通事故 北海道の集団旅行 推測と水銀燈 おあ氏とS氏とくんくん人形 白馬の王子様 人は、人生という道を歩んでいる 水銀燈と家庭科 金糸雀先生 金糸雀の音楽(?) 対人兵器 コスプレ大会 進路相談:金糸雀の場合 翠星石先生 翠星石と下宿 翠星石とラーメン屋 翠星石のイタズラ 進路相談:翠星石の場合 蒼星石先生 蒼星石小ネタ? 蒼星石と舞踏会 結婚 ほ し が きレス入り 蒼星石と女子高生2(書き散らし氏ver 進路相談:蒼星石の場合 RPGと蒼星石 蒼星石と屋上と煙草 真紅先生 あずまんが真紅 真紅と賓乳 煙草とくんくん 水銀燈へのプレゼント 真紅とプール 進路相談:真紅の場合 昔の話 Another Sky 雛苺先生 ひなまつり ひなまつりケーキ 雛苺と演劇部 進路相談:雛苺の場合 雛苺の一日 見かけによらない 雪華綺晶先生 ばらきらと胸 ローゼン大掃除 夢 対人兵器金糸雀先生のとこの対人兵器と同じ 進路相談:雪華綺晶の場合 薔薇水晶先生 GTB(グレート・ティーチャー・薔薇水晶) 水銀燈×薔薇水晶水銀燈先生(ry 薔薇水晶の春 薔薇水晶&水銀燈と卒業式水銀燈先生(ry 薔薇水晶の家庭訪問2 薔薇しぃブルマ 薔薇水晶の憧れ マウスの上の日向ぼっこ 薔薇水晶と食堂 進路相談:薔薇水晶の場合 薔薇水晶と新婚生活 複数 おかずの交換 鬼ごっこ 怪談大会 桜田ジュン 怪談大会 その他 おあ氏の衝撃事件簿 ローゼン ローゼン×ラプラス 胆試し大会 ローゼンと不良とパチンコ 痔 ローゼンの日常 入学式 ラプラス ローゼン×ラプラスローゼン(ry ラプラスvs不良 日常 入学式 誰も居ない……更新するなら今のうち…… 新作見たいなwww -- 名無しさん (2008-08-17 20 58 44) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/yaranaio/pages/37.html
出番別長編まとめ - 主人公 やらない夫と最後のデート オリジナル ヒロイン:ゴリラ 真紅 ゴリラ 銀ちゃんとやらない夫 短編連作ものというか、作者の方が作った一連の作品群 ヒロイン:水銀燈 蒼星石は家庭教師になるようです 二次創作:ミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』 ヒロイン:蒼星石・水銀燈 やらない夫が怪盗を追いかけるようです ジャンル:オリジナル 完結済み ヒロイン:水銀燈 やらない夫のひとりWW 二次創作:映画『コマンドー』] 完結済み ヒロイン:水銀燈 やらない夫は主に尽くす オリジナル 完結済み ヒロイン:水銀燈 やらない夫で楽しむ世界の童話「騎士と水の精の恋」 完結済み ヒロイン:水銀燈 やらない夫「愛あるエロは、最高にエロい!」 二次創作:カノジョは官能小説家 完結済み ヒロイン:水銀燈 やらない夫はサイコスタッフだったようです 二次創作:サイコスタッフ ヒロイン:真紅 完結済み やらない夫は泥棒を追う様です 二次創作:テイルズオブヴェスペリア ヒロイン:水銀燈 やらない夫がやる夫の内部告発を手伝うようです 二次創作:映画『インサイダー』 完結済み ヒロイン:真紅 やらない夫の大正冒険奇譚 二次創作:パワプロクンポケット7(裏) ヒロイン:水銀燈 やる夫はオペラ座の地下室に住んでいるようです 二次創作:オペラ座の怪人 ヒロイン:真紅 やらない夫の大正冒険奇譚 二次創作:パワプロクンポケット7(裏) ヒロイン:水銀燈 やらない夫でボクと魔王 二次創作:ボクと魔王 ヒロイン:真紅 やらない夫と真紅の恋は大騒ぎ オリジナル ヒロイン:真紅 あっぱれやらない夫 二次創作:戯曲『あっぱれクライトン』 ヒロイン:水銀燈 やらない夫・真紅・金糸雀が北海道の裏グルメを極めるそうです オリジナル 完結済み 続編あり:やらない夫が道東のお菓子事情に介入するようです やらない夫が道東のお菓子事情に介入するようです オリジナル ヒロイン:真紅 水銀燈アフター 〜It's a Wonderful Life〜 二次創作:智代アフター ヒロイン:水銀燈 やらない夫がバトロワに参加させられるようです 二次創作:バトルロワイヤル ヒロイン:真紅 やらない夫は【 あ 】の付く職業のようです オリジナル ヒロイン:真紅 やらない夫とエデンの戦士達 二次創作:DQ7 完結済み ヒロイン:水銀燈 やらない夫が覇道を歩むようです 二次創作:リネージュ2 バックストーリー ヒロイン:真紅 やらない夫が罪を思い出すようです 二次創作:ペルソナ2 罪 ヒロイン:真紅・水銀燈 やらない夫はジャバウォッキー 二次創作:ジャバウォッキー ヒロイン:水銀燈 やらない夫が見果てぬ夢を見るようです 二次創作:ミュージカル映画「ラ・マンチャの男」 完結済み ヒロイン:水銀燈 やらない夫は吸血鬼に成り果てる 二次創作:ヘルシング ヒロイン:水銀燈
https://w.atwiki.jp/rozenrock/pages/196.html
興奮した感情を落ち着かせるため水銀燈は細長いタバコを口に運び、ジーンズ のポケットをポンポンと叩きライターを探す。 (おかしいわねぇ、パチンコ屋に忘れてきたぁ? しょうがないわぁ) 水銀燈は周りで取り巻く見物人の中から先ほど声をかけてきた男に近寄る。 「オジ様ぁ~。ねぇ、ライターもってるぅ?」 男はジャケットからライターを出し水銀燈に手渡す。 「あぁ、ライターならあるよ。しかし姉ちゃん強いなぁ」 火をつけ深呼吸するように馴染んだ煙を体内に入れる水銀燈。 「そう?でも本当に強いのは我慢して手を出さずにいたその子よぉ」 そういい目線を地面に座り込む翠星石に向けてニコリと笑う。 「水銀燈・・・す、翠星石は怖かったのですぅ~」 翠星石はそう言い、立ち上がると水銀燈の肩に頬を乗せる。 水銀燈は優しく翠星石の頭に手を乗せなでていると通報されたのか救急車と パトカーがゆっくりと通りに入ってくる。 鼻からしたたる血をハンカチで押さえ救急車に乗り込む男に向かって 水銀燈は翠星石に接してる時と違う笑みを見せて言う。 「運が良かったわねぇ、相手が私じゃなくて金髪のツインテールの子だった らァ、今頃は自分の足で救急車に乗れなくなってるわよォ~、ウフフフ」 水銀燈と翠星石が詳しく事情を話し警察署から出る頃、真紅、雛苺、金糸雀 薔薇水晶の携帯に蒼星石から連絡が行く。 「ふゆぅ~、やっぱり水銀燈はつよいの~。翠星石は大丈夫だったの~?」 「うん、水銀燈が助けてくれたから大丈夫みたいだよ、それじゃ金糸雀に 連絡するよ。バイバイ」 「ランディーを相手にしたエロオヤジの方が災難だったかしら~」 「そうだね、でも真紅が相手だったら今頃もっとヒドイことになってるよ じゃあ薔薇水晶に連絡するから、また明日ね。バイバイ」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「あのぉ、薔薇水晶?僕の話、聞いてる? じゃ、じゃあ 真紅に連絡するからまた明日ね、バ、バイバイ」 「病院送りですってェ~? まったく水銀燈は腕力にモノを言わせすぎ なのだわ!」 「そ、そうだね、真紅だったらもっと大人の対応ができてるよね・・・?」 一通り連絡した蒼星石は一息入れ、熱いほうじ茶を口に運んでいると 翠星石が帰って来た。 「今帰ったですぅ~。水銀燈も一緒なのですよッ、今晩は泊まりですぅ」 蒼星石が出迎えると玄関で水銀燈が笑顔で手を振っている。 「翠星石が帰り道が怖いとか言うからぁ、来ちゃったわァ」 「す、翠星石はそんな弱気なこと言ってないですぅ!水銀燈がかってに 犬っコロみたいに付いてきやがったのですぅ」 「ウフフ、じゃぁ翠星石は子ネコみたいに私に引っ付いてたわよぉ」 「なッ、何を言いやがるですかァ」 2人の会話に笑みをこぼす蒼星石。 「水銀燈、今日は本当にありがとう。今夜はゆっくりして行ってよ」 3人は翠星石の部屋で音楽の話やそれぞれこれから一緒に進むであろう 未来の夢や目標について冗談交じりではあるが時に熱く語る部分もあった。 卒業したら薔薇乙女で東京に進出、その後は世界を相手に大暴れ!3人は 冗談とも取れる話で盛り上がった頃、水銀燈が大きく背筋を伸ばすのを見た 蒼星石は水銀燈に風呂を進める。 「僕はもう入ったから水銀燈、お風呂に入っていったら?」 「私は最後でいいわぁ、翠星石が先に入りなよォ」 「覗くんじゃねぇですよッ」 翠星石がそういい残して風呂に行くと蒼星石は水銀燈に改めて礼を言う。 「本当に翠星石を助けてもらって何て礼を言ったらいいのか・・」 「イイわよぉ礼なんてぇ、同じ薔薇乙女っていう仲間じゃないィ」 「ありがとう水銀燈。ところで泊まるって家に連絡しなくていいの?」 「いいわよォ、あんな狭い家に私の居場所なんて無いんだから」 「狭い?水銀燈の家は凄い大きなお屋敷だよね?」 薔薇乙女達が住むこの海沿いの街で水銀燈の家は戦前からの貿易で財を なした祖父の代から続く名門であった。小高い丘に建つ洋館にはいつも 四季を感じさせる花が咲き乱れ道行く人々から羨望の視線をうけていた。 ただ母親は水銀燈を産むとすぐに他界し父親は幼い頃から海外を飛び回り 水銀燈と顔を合わすのは年に1~2回ほどでしかなかった。 真紅達と出会うまで水銀燈はその広い屋敷の中でいつも独りぼっちの 時間を過ごしていた。そんな水銀燈にとって大きな洋館はただの空洞に 過ぎない。 「ふんッ、あんなのは見せかけの何もない箱だわァ」 やや重い空気が生まれようとした時、いきおい良く翠星石が風呂から 帰ってくる。 「くぁぁ~、サッパリしたですぅ。さぁ水銀燈も入りやがれですぅ」 「じゃぁそうさせてもらうわぁ」 湯船につかる水銀燈は改めて薔薇乙女というバンドを考えてみる。 バンド 仲間 信頼 かけがえのない親友達 そして最高の家族。 「水銀燈、着替えのシャツなんだけど、僕のを置いてるからね」 蒼星石の声に短くアリガトウと答え浴槽から出る水銀燈。 蒼星石のシャツを着て部屋に戻ると蒼星石から羨望の声が出る。 「うわぁ~、やっぱり水銀燈はスタイルいいね。羨ましいよ」 銀色の髪はシットリと濡れて細い湯気が上がり、体温が上がった頬は ほのかな赤みを差し、ウエストは細く括れ、丸みがありやや小ぶりな ヒップから伸びる足はしとやかなツヤを見せてスラリと伸びていた。 「そんなに見ないでよぉ~。恥ずかしいじゃないィィ」 「ヘンッ、水銀燈のどこがスタイルいいのですかッ?翠星石にとったら 水銀燈のオシリなんてただのサンドバックですぅ」 そう言うと翠星石は水銀燈のオシリにパンチを笑いながら打ち込む。 「ちょっとォ、何するのぉ?」 水銀燈は翠星石の手を払い、そのまま覆いかぶさるようなポジションを取り 翠星石の脇に手を伸ばす。 「キャハハハ~、止めやがれですゥ、くすぐったいですぅ。キャハハ」 「乙女のヒップにィ、パンチを入れた罰よォォ」 足をバタつかせて笑う翠星石をくすぐる水銀燈を見て苦笑する蒼星石。 「何をやってんだか・・・まったく子供みたいだね」 その言葉に水銀燈と翠星石は一斉に蒼星石に襲い掛かる。 「うわぁ~、止めてよ。アハハハ~」 ただの仲間から音楽が始まりバンドを組み、そのバンドから生まれる音と メロディーが仲間としての繋がりをより深めていく。 水銀燈、翠星石、蒼星石はそんな絆を明け方まで続いた笑顔と笑い声の 中にしっかりと感じ取っていた。もう独りぼっちじゃない、水銀燈にとって 仲間は家族でありそれ以上の宝物に感じられていた。 その後、停学が解けて登校した水銀燈に担任の梅岡から「退学」の 2文字が告げられた。 停学開けに指導室に呼ばれた水銀燈は突然の言葉に怒りを表す。 「はぁ~? なぜ退学なのよォ!!」 説明を求める水銀燈の言葉に梅岡は苦い表情で説明する。 相手に非があるとはいえ2ヶ所の骨折を負わせた暴力であり先に 手を出したのが水銀燈であること、停学中でありながら夜の街で 警察沙汰になったこと、その際にタバコを所持していた事が上げられた。 「じゃぁ、私が居なかったらぁ翠星石はどうなってたのよォ?それにぃ 私は仲間を見捨てるような腐った女じゃないわァ~」 「翠星石の件に関しては意見の分かれる所だが、お前が起こした暴力や タバコの所持だけでも大問題だ。お前はあの名門の・・」 水銀燈は梅岡が言った言葉に敏感に反応する。 「あんな箱みたいな家なんか関係ないわァ~、こんな学校も同じクソよ!」 そう言い床にペッと唾を吐きかけ、前にある机を蹴飛ばす。 「こんなところ辞めてやるわぁ~」 そう言い残し水銀燈は派手にドアを開けると出て行く。 かなり遅刻気味に登校した金糸雀は校門を出て行く水銀燈とすれちがい 足を止めた。 「ちょっと水銀燈はどこに行くのかしら~?」 「辞めてきたわぁ、こんなバカらしい所は今日でサヨナラよぉ~」 そう言いながら水銀燈は背を向けたまま手を振り駅の方に歩き出す。 授業が終わろうとした時、マナーモードに設定している携帯が細かい振動で 着信メールを真紅に知らせる。金糸雀から来たメールに目を通す真紅。 ガタンッ、真紅が大きな音をだし席を立つと同時に授業終了のチャイムが 響く。そのまま真紅は廊下に出て梅岡の姿を探し出す。 「話があるのだわ! なぜ水銀燈が退学なのか説明して頂戴!」 そういい真紅は梅岡の手を引き近くにある美術室に入る。 梅岡は水銀燈に告げた退学の内容を真紅に説明する。 その梅岡の目を見据えた真紅の口から言葉が出る。 「翠星石を助けたのは考慮してくれないの?」 「それを考慮してもダメだ、職員会議でも決まった事だ。それに」 「それに、何よ、はっきり言うのだわ!」 「水銀燈といい翠星石といい、あんな場所で何をしてたんだか。 お前達バンドをしているとか言いながら本当は違うことをしているん じゃないだろうな?」 「違うこと?それは何のことを言ってるの?まさか・・・」 「最近、この街で援助交際が多発していると聞いている。お前らもその中に 入ってるんじゃないのか?」 ありもしない疑いと疑惑を投げかけられた真紅の表情は怒りの色を見せる。 しかし真紅にとって怒りの色は水銀燈や翠星石、その仲間達を侮辱した梅岡 の言葉と表情に対してだった。 真紅の手が素早く梅岡のネクタイを掴むとそのままグイッと力任せに引く。 梅岡の顔は真紅の顔と数センチまで近づく。 「何ていったの? 今ここで殺してやるのだわ!」 掴んでいるネクタイを締め上げる真紅。梅岡の顔色が変わってきた時、 美術室の扉が開き授業の用意に入ってきた教師に真紅は梅岡から引き離される。 「おい、真紅。何をしているんだ」 真紅から開放された梅岡は床に膝を着き激しく咳き込む。 真紅の肩を押さえている教師の後ろから授業を受けるクラスが入ってくる。 「ねぇ、ナニ、ナニこれぇ。また真紅よ~」 「本当ォ、うわぁ、見て見て。梅岡のヤツ顔色ヤバイんじゃないィ~」 「知ってた?水銀燈ってヤツ退学だって。これで真紅も退学決定ね」 「イイ気味ね、ちょっとバンドで人気があると思ったらツケ上がって」 真紅の耳に生徒のヒソヒソ話が小さく入ってくる。その生徒達を睨む真紅。 「そこをドキなさい、邪魔なのだわ!」 美術室から出て行く真紅の後ろで梅岡が怒鳴る。 「おい、真紅。あとで職員室に来なさい!」 その声など耳に入らないかのように真紅は出て行った。 水銀燈の後を追いかけた金糸雀は駅へと続く橋の上で水銀燈に追いつく。 「ねぇ、水銀燈は本当に辞めちゃうのかしら?」 「ふんッ、退学なんだからぁ、しょうがないじゃぁない~」 (コレももうイラナイわねェ~) 水銀燈は鞄から停学中にまとめたレポートを取り出し橋の上から投げ捨てた。 5月の風に乗ったレポートがヒラヒラと舞いながら海へと続く川に落ちていく のを水銀燈と金糸雀は無言のまま見ていた。 (4)へ戻る/長編SS保管庫へ/(6)に続く
https://w.atwiki.jp/animerowa/pages/541.html
人形裁判 ~ 人の形弄びし少女 ◆2kGkudiwr6 ネコという動物の主な特徴についてご存知だろうか。 俊敏性に優れ体は柔軟、夜目が利き鼻も利くが、何よりも優れているのは聴覚である。 それはネコ型ロボットであるドラえもんも例外ではなかった……あくまで、なかっ「た」だ。 とある事件から彼の聴覚は普通の人間並みまで落ち、 常人の20倍の嗅覚を持つ「強力鼻」、周囲の物体を感知する3対の「レーダーひげ」も故障中。 つまり、彼の五感は普通の人間と変わりはしない。 それでも、今までドラえもんはそれで困ったことはあまりなかったのだ。 そう――今までは。 ■ 私は思わず歯を噛み締めていた。私が人間なら、確実に音を周囲に漏らしているだろうと思うほどに。 だが現実には音は出ていない。なぜなら、私は魔道書だから。 「なにしてるの! ぐずぐずしてる時間なんてないんだからね!」 活発そうな女学生――確か、ハルヒと言ったか――が声を上げる。 その言葉に、私は少なからず安堵した。二人きりになっていればきっと殺されていたから。 それでも、苛立ちはこの身から離れはしなかった。 ――ふふ、でもあなたも酷いわねぇ、『魔法の本』さぁん? あなたが強情張ってないで何か喋ってれば、この子を逃がせたかもしれないのにねぇ…… ま、そうなればあの子達みんな皆殺しになってただけだろうけど―― 言葉を思い返して、再び感情が爆発しそうになる。 私には、何も出来ない。誰かに話しかける?できたらとっくの昔にしている。 今の私が話しかけられるのは、持ち主だけ。 こんな時に限って、プロテクトの解除は最悪な部分から進んでいた。 ……この書に眠る、数多の魔法から。 「……ちょっと待って。外に誰かいるみたいねぇ」 物思い……というよりは寧ろ怒りに沈んでいた私を現実に引き戻したのは、その怒りの対象だ。 どうやら外にいる人物に気付いたらしい。他の二人と一体に先んじて捉えたようだ。……当然の摂理ではある。 私がユニゾン・デバイスである以上、融合された者は身体能力が上昇する。 普段は歩けないものの私を使うことで健常者同様に動いた主はやてがいい例だ。 デバイスと使用者、二人分の力が加算されるのだから当たり前だが。 「……僕には見えないなぁ」 「僕も……」 「私も見えないわね」 「ま、それもそうでしょうねぇ。 実はね。私は、魔法使いなのよぉ」 見えないと声を上げる三人に対して、得意げに人形はそんなことをほざいている。 いったい誰の力だと思っているのだ。 そんな私の感情を露知らず、ハルヒという女学生は喜色満面といった様子だ。 「ほ、ホントに! 見せて見せて!」 「ほら」 『Photon Lancer get set』 「す、すごい……!」 こんな人形に従っているこの身を焼き尽くしたい衝動に駆られたが、できるはずもなく。 私にできたのはフォトンスフィアを浮かび上がらせて女学生を喜ばせることだけだ。 「ねえ、それでアルちゃんを探したりとかできないの!?」 「それは無理ねえ。 私、そういうの得意じゃないもの」 相変わらずよくもまあぬけぬけと。貴様が殺したのだろう。 そのまま人形は続けていく。偽りに装飾された言葉を。 「その代わり、攻撃魔法とかは得意だから。 だから皆はここに残ってなさい。私が外にいる人達を見てきてあげるわよ。 私を襲った奴が来たのかもしれないしぃ」 「……逃げ回ってたのに大丈夫なの?」 「前に襲われた時は不意打ちで手ひどくやられちゃってねえ。 それで、逃げ回りながら回復に努めてたってワケ。 でももう回復したし、ちゃあんと警戒してるから大丈夫よぉ」 人形がぺらぺらと喋った内容を要約すると、一人で外にいる人物を見てこようということだろう。 ……悪寒が走る。こんなことを言い出した理由なんてはっきりしすぎている。 「何か爆発音とかが聞こえたら、病院のどこかの部屋に隠れること……いいわねぇ?」 その後青狸やのび太少年と適当に会話があったものの、結局人形に誤魔化されて終わった。 そのまま見えないように笑みを浮かべて、人形は外へと歩き出す。 これからこの人形が何をするかなんて、分かりきってる。 だから。 お願いだから、逃げて―― ■ そんなリインフォースの悲哀と憤怒など露知らず。 「あ~、やっと到着」 ん~、とセラスは満月の中伸びをした。 もっとも、到着と言うには少々遠い距離だ。まだ数百mは離れている。 劉鳳とジャイアンが起きていれば、「本当に着いたのか?」と声を上げていただろう。 この夜闇の中でも軽々と視認できる辺り、さすがは吸血鬼と言ったところか。 だから、中から出てきた相手を視認できたのも当たり前のこと。 (……うわ、すご。もう慣れてきたけど) セラスの水銀燈――もっとも今の姿はリインフォースのものだが――への第一印象がそれだった。 主にファッションセンスとか背中の翼とか真っ赤な目とか。あと、胸がでかい。 (もしかして、お仲間?) この場合、お仲間とは吸血鬼などそういった類の物を指す。 つまり、ろくな者ではないという判断でもある。 できるだけ悟られないように身構えながら、セラスは正面から歩み寄ってくる相手を凝視した。 しかし、水銀燈はというとセラスの存在が目に入っていないかのように歩いてくる。 鞄を引き摺りながらのんびりと。 (気付いてない……割には、まっすぐこっちに来てるし) 相手の意図を測りかねて唸るセラス。無用心なのかそうではないのか分かりにくい。 もっとも、種を明かせば単純な話。水銀燈としてはただテストをしたかっただけ。 相手がゲームに乗っているかどうか、ちょっとした確認である。 怪我人を二人引き連れている時点で乗ってなさそうだと思ってはいたが、 念には念をというやつだ。 結局セラスが何をすることもなく両者の距離は詰まっていき、 だいたい20m程度のところで水銀燈は立ち止まって、口を開いた。 「こんばんはぁ」 「こ、こんばんは」 慌ててセラスは挨拶を返した。もっと他に言うことがあると思うが。 どうしようかセラスは考え込むしかない。劉鳳達を起こすべきなのだろうか…… 一方水銀燈はというと、リアカーへと視線を移して……こちらもリアカーを見つめたまま黙り込む。 微妙な空気といびきだけが流れるのに耐えかねたのか、セラスは慌てて口を開いた。 「あの~、劉鳳君の顔になんか付いてます?」 「そうね…… その様子だと、貴女って、ゲームに乗ってないのよねぇ?」 「?」 水銀燈は劉鳳の制服を見て、考え込んでいただけ。 真紅のローザミスティカを持っていったという男はこいつではないのか、と。 だから、迷っていた。あの女の言葉は真実なのか、それとも虚言か。 力を温存するべきか、それとも力ずくで奪い取るべきか……? ――もっとも、病院に辿り着く前に追い払うという結論は決定済みだったが。 「その制服着てる奴は、人殺しよ」 「は、はあ!?」 そして出した方法が、適当に嘘でも吐いてみること。 当然説得力の欠片もない。いきなり見知らぬ他人からこんなことを言われて、素直に信じる馬鹿はいない。いないが。 「ちょ、ちょっと待ってって! なんか勘違いしてるんじゃ……」 驚いたり、困惑したりはする。セラスも例外ではなかった。 心の中で水銀燈はほくそ笑みながら、二の句を告げる。 ……羽根を風に散らせながら。 「嘘だと思うなら、そいつを起こして聞いてみるぅ?」 「…………」 水銀燈はできるだけ無愛想な表情を取り繕っていた。いかにもその男を憎んでいます、といった様子で。 半身半疑ながらも、セラスが劉鳳を起こすために水銀燈から注意を逸らした、その瞬間。 『Blutiger Dolch』 「へ?」 周囲に撒き散らされていた羽根が、赤い刃へと姿を変えた。 ■ 「…………」 『マスター、二時です』 「……ん。あいつが戻ってきた様子は?」 『まだありません』 「……そう」 橋から少し離れた場所。 ぽつんと佇んでいた民家で寝転んでいた凛は、レイジングハートの声に目を開けた。 脇には皿などの食事の跡が残されている。 「……この格好も久しぶりかも」 そう呟きながら伸びをする彼女の姿は、いつもの赤い服を着た姿だった。 流石に仮眠をとる時まであんな格好をしたくはない、というのが主な理由である。 ……魔力消費の削減という意味も、一応はあるが。 『これからどうしますか、マスター。 もうしばらく仮眠をとるか、それとも……』 「…………」 『マスター?』 音が止まる。ただ電灯だけが、か細く点滅する。 レイジングハートの声に、凛は黙り込んでいた。その顔は、悲哀に満ちていて。 しばらくして、ぽつりと彼女は呟いた。 「悲しく……ないの?」 『…………』 「貴女の『マスター』は高町なのはでしょう、レイジングハート。 私じゃ……ない」 いつも強気な彼女らしくない、弱気な言葉。 これだけ死人が出ている状況の中、何もできていなかったから。 自分の無力さを思い知って。自分がちゃんと使いこなせているとは思えなくて。 だから、こんな弱音を吐いてしまって。 『あなたは、脱出を諦めたとでも言うのですか?』 「え?」 そんな凛に返ってきたのは今まで聞いたことのない、強い口調。 目を瞬かせる凛を無視して、レイジングハートは詰問していく。 『答えてください!』 「あ、諦めてない」 『なら、できるだけ多くの人を助け出して、「マスター」の仇を討ってくれることに変わりはありませんか?』 「……う、うん」 『なら……今は貴女が私のマスターです、凛』 呆然とする凛。それっきり何をいう事もなく黙り込んだ。 もしレイジングハートが人間だったなら、口を尖らせてそっぽを向いていただろう。 うっかりでも、おっちょこちょいでも……結局、レイジングハートは凛の人柄に好感を持っていたから。 だから、彼女は言っていたのだ。『マスター』と。 昔ユーノに、そしてなのはに言っていた言葉を。 「……ごめん」 そうして、互いに話すこともなくただ佇んでいた、数分後。 突然、凛はハッとなったようにその顔を上げた。 『どうかしましたか?』 「水銀燈からのパスが切れた……何かあったのかも」 パスとは使い魔とマスターを繋ぐ、魔術的な繋がりの事だ。 もちろん遠くに行くということは、それに合わせて魔力供給の具合も悪くなることを意味する。 だが、それでもパスそのものが無くなることはない。一度生まれた互いの結びつきはそうそう消えはしない。 使い魔と主の関係とはそういうものだ……普通の、使い魔は。 だからこそ――レイジングハートは声を上げた。 今をおいて好機は他にないと。 『待ってください。話しておきたいことがあります』 ■ リアカーが宙を舞う。 とっさにセラスによって投げ飛ばされたリアカーは綺麗に近くの家屋に叩きつけられていた。乗っていた二人ごと。 「い、いってぇ!」 「セラス、一体何が……」 「説明は後で!」 目覚まし代わりと言うにはきつすぎる衝撃に不満を上げる二人の不平不満は、 セラスによって一言で強引に終わらせられた。 目を擦りながら二人が視線を向けた先にいたのは……腹部から血を流しているセラス。 そして、空に舞う黒い天使だった。 「始めからこういう魂胆で……」 「人殺しを匿うような奴に手加減する義理も無いでしょ?」 いきり立つセラスの言葉と視線は、水銀燈にあっさりとあしらわれた。 この期に及んでも嘘八百を貫くあたりは流石と言ったところか。 もう躊躇わずにセラスが銃を抜いたのと、水銀燈が再び能力を行使したのはほぼ同時。 『Blutiger Dolch』 「っのお!!!」 夜天の書が言葉を紡ぐと同時に6つの赤い刃が浮かびあがり、敵を討つべく急襲する。 だがそれが本来の責を果たすことは無い。全てセラスのジャッカルに撃ち落とされ、宙で爆散する。 六点連射。吸血鬼の並外れた能力があってこそ成り立つ高速連射だ。 本当は、セラスは撃ち落とすことではなく敵を撃つことを優先するつもりだった。 一発貰う代わりに敵を倒せるなら問題ない。多少の負傷は吸血鬼なら平気だ。 ……しかし、凶器が劉鳳たちを狙っていたとなれば話は別となる。 「お前は敵への攻撃に集中しろ! 自分の身ぐらい自分で守れる!」 「俺だってちょっとくらい……!」 「いいから無茶しないで休んで!」 次弾を装填しながらセラスは二人を怒鳴りつけていた。 ジャイアンは足を折ってまともに動けそうになく、劉鳳に至っては顔面蒼白。絶影も出せそうな様子は無い。 そもそもセラスが吸血鬼だからこそ水銀燈の刃を途中で撃ち落とすという真似が可能なのであって、 あの刃が奔る様子は常人にはまともに視認することさえできないのだ。 今の二人が防げるとはセラスには思えない。 『Plasma Lancer』 次に水銀燈が行使したのはフェイトの魔法、光の槍。 セラスは劉鳳たちの目前へと跳びながらも、高速で飛ぶ槍を次々に撃ち落としていく。 撃ち落とされたプラズマランサーはそのまま地面へと突き刺さり、 「ターン」 水銀燈が腕を振るのと同時に、セラス達へと再び狙いを定めた。 更に。 『Blutiger Dolch』 新たな血染めの刃が水銀燈の前面に展開する。その数4。 セラス達へと向き直った光の槍の数も4、そして再びジャッカルに込め直した弾の数は6。 明らかに、足りていない! 「二人とも、頭伏せて!」 「え」 「うおっ!?」 警告と同時に、セラスは片手でリアカーを引っつかんだ。劉鳳とジャイアンの頭のすぐ側をとんでもない質量が掠めていく。 四方から迫るプラズマランサーと、正面から迫るブラッディダガー。 それらを全て視界に収めたまま、セラスは右手でジャッカルを連射しながら左手でリアカーを振り回した。 赤い刃は全てセラスが振り回したリアカーと衝突して爆発し、 光の槍はジャッカルの銃弾によって軌道を逸らされる。 ジャッカルの弾、残り二発。それが何を狙うものかは言うまでも無いことだ。 完全にバラバラになったリアカーを放り投げながら、セラスは敵へとジャッカルの狙いを定めようとして。 「旅の鏡」 「え……?」 その口から、息とも声とも付かない音が漏れた。 劉鳳もジャイアンも、呆然とするしかない。 何も無い虚空から、水銀燈の腕が生えて。 セラスの手から、ジャッカルを奪い取っていた。 ■ 夜空に響く銃声と爆発音。 病院の玄関脇に隠れて覗いていたのび太とハルヒは、慌てて首を引っ込めた。 そんな二人に呆れたように声を掛けるのはドラえもんだ。 「隠れてる方がいいよ、二人とも。だいたい、ここからじゃ全然見えないじゃないか」 「そ、それはそうだけどさ……」 「冗談じゃないわ! SOS団新団員を放っておくなんて団長のやることじゃないわよ!」 ハルヒの脳内では、どうやら遠坂凛もとい水銀燈は団員認定されたらしい。 魔法使いという響きが大層気に入ったようだ。 「だいたいね、私達が目を離したからアルちゃんがどっかにいっちゃったんでしょ! おんなじ間違いをするわけにはいかないのよ、青ダヌキ!」 「!!! 僕はタヌキじゃな~い!!!」 ハルヒの言葉に激怒するドラえもん。 これで何回目か数える気にもならない騒動を尻目に、のび太は外を見つめ続けていた。 理由は簡単。彼は目が悪いため、注視しないとよく見えないから。 「なんかあの格好、どこかで見たような気がするなぁ……」 そして……はっきりと見たいものがあるから。 ■ 何も無いところから腕が生える。向こうでは、肘から先の腕が消えている。 そんな異様な光景から一番早く立ち直ったのは、セラスだった。 「あ、ちょっと待……!」 「待ってあげない」 セラスが咄嗟に反応するより早く、水銀燈は腕を引っ込める。 鏡を跨いでいた腕は元の場所に戻っていた……ただし、先程とは違ってジャッカル付きで。 「ふ~ん、どれどれ……」 「づうっ!?」 そうして、水銀燈はジャッカルをセラスへと向けた。 銃声が奔り、鮮血が飛ぶ。苦悶の声が響く。 ただし、声は二人分。 予想以上の反動に、水銀燈は思わず指を押さえていた。 ジャッカルはというと、反動でどこかへと飛んでいってしまっている。 「い、いったぁ……!?」 「ふんだ。仮にもマスターの銃だもん、そうそう簡単に撃てるもんですか!」 指を赤くしながら呻く相手に、セラスは肩を押さえながら言ってやった。 とはいえ、セラス自身も分かっている。これは強がりに過ぎないことに。 ジャッカルを奪い取られた以上……もう、セラス達に飛び道具は無いのだ。 「言ってくれるじゃない……!」 水銀燈が目を吊り上げると共に、周囲に無数の光弾が浮かび上がり始めた。 それはまるで、夜空を染め上げる照明だ。もっとも、水銀燈の意思で自由に落ちてくる照明だが。 このまま放っておけば全滅は確実だろう。 「……あんまり使いたくなかったんだけどなぁ、これ」 そう愚痴りながら、セラスはデイバッグに手を突っ込んだ。 しばらくして取り出された手に握っているのはバヨネット。 メモ帳越しとはいえ、微かにセラスの肌が焦げるような匂いがする。 「二人とも、ここは私に任せて全力で走って」 「ふざけるな! そんな真似ができる……ぅ」 「ほら、叫んだだけで足にきてるし。武くん、悪いけど」 「分かった……けど、セラス姉ちゃんもちゃんと逃げてくれよな」 「大丈夫、まっかせなさい!」 「く……」 そうして、セラスは水銀燈へと向き直る。 その後ろから劉鳳を抱えたジャイアンが走り出した、その瞬間。 「それは困るのよ……旅の鏡」 「ぐっ!?」 再び水銀燈の腕が虚空から生えた。 反応する間もない。今度掴み取ったのは……劉鳳のデイバッグ! 「くそっ!」 とっさに劉鳳が生えた腕を掴もうとしたものの、間に合わない。 今度はデイバッグを奪い取って、腕が消える。 劉鳳のデイバッグを手元に引き寄せた水銀燈は、中から目的の物を取り出した。 「ふふ、見~つけた」 笑みと共に取り出されたのは、赤く輝く宝石――ローザミスティカ。 水銀燈が何よりも追い求めていたモノ。 「貰っちゃった♪ 貰っちゃった♪ 真紅のローザミスティカ貰っちゃったぁ♪ あんた達ったら本当にお馬鹿さぁん――ああ、力が溢れる――!!!」 まるで童女に笑いながら、くるくると水銀燈は宙を舞う。 同時に、宙に浮かぶ光弾が更に光を増し始めた。術者に呼応したかのように。 突然の事態に呆気に取られるセラスとジャイアンだったが、劉鳳だけは違う反応を見せた。 「……真紅を知っている、のか!? 貴様一体!」 劉鳳の言葉に、水銀燈の笑みが消える。 そう……この言葉は下手をすれば正体がバレかねない失言だ。 少しまずいかもしれない……水銀燈は悩んだものの、あっさりと結論を出した。 そう、答えは単純。目撃者を全て消せばいいだけの話。 「……というわけでぇ。消えて」 「キサ、マ……」 「劉鳳君!?」 「兄ちゃん!?」 怒りに燃えた言葉は最後まで紡がれず。劉鳳は無様にその場に倒れ込んだ。 それを見てほくそ笑んだのは水銀燈だ。まるで狙い通りと言わんばかりに。 いや、これは実際に彼女の狙い通りなのだ。水銀燈は劉鳳から魔力を吸い上げていたのだから。 戦闘開始同時に水銀燈は凛との契約を強制的に断ち、契約相手を劉鳳に切り替えていた。 これは契約とは名ばかりの強制的な魔力蒐集。誰から吸うかなんてことは思いのまま。 そして、夜天の書を装備したことにより、魔力吸収量は更に強化されている。 その補給を頼りに、この戦闘で水銀燈は高ランクの魔法を連発していた。 更に悪いことに、劉鳳はアルター使いではあるが魔術師ではない。体力は人並み外れているが、魔力は無い。 そんな彼が水銀燈に魔力を奪われればどうなるか。当然、魔力がない分を体力で賄う羽目になる。 彼がアルターを出せなかったのも、そして段々と弱っていったのもそれが原因だ。 ただでさえ満身創痍だったのに、魔力蒐集の追い討ちを喰らってはまともに動けはしない。 そしてここにきて水銀燈は大規模な魔力蒐集を行ったために、ついに耐え切れずに劉鳳は倒れてしまったのだ。 ――そして大規模な魔力蒐集は、水銀燈が大技の準備を始めたという事でもある。 『Photon Lancer Genocide Shift』 夜天の書の声は、正真正銘の死刑宣告。 セラスたちが逃げ出す暇も無い。百を越える金色の魔弾だけが、闇を明るく照らしだした。 ■ 「――そんな」 『全て真実です、マスター』 呆然とする凛に、レイジングハートはそう念押しした。 彼女は全てを話した。 スネ夫を助けるフリをして盾にしたこと。 病院の魔力反応が、水銀燈が探す前と後で明らかに変わっていたこと。 その他、疑念を全て。 『マスターとその妹との間にあったことは聞きました。 ですが、あの人形が貴女のようなお人よしである保証は全くありません。 むしろ疑わしいというべきです』 そして、最後にレイジングハートはそう断言した。 あれは決して味方などではない、敵だと。 それを最後に、また音が死んだ。ただ微かに、凛がレイジングハートを強く握り締める音がしただけ。 「分かった……水銀燈を探しにいく」 そうしてやっと、凛はそう口を開く。 唇を噛み締めながらも、凛はレイジングハートにそう告げた。 その怒りは水銀燈に対してのものか……それとも、迂闊な自分に対してのものか。 そのまま凛は家屋から出たものの……パスが切れている以上、手がかりはない。 目に強化魔術を掛けて周りを見渡すにしても、障害物が多いこの周辺では役に立つかどうか。 実際はたずね人ステッキなるものが彼女のデイバッグにあるのだが、 エルルゥが説明書を紛失していたため凛は全く使い道を分かっていない。 従って結局。 「レイジングハート、エリアサーチ」 『All right』 凛の命令と同時に魔術式が起動。夜闇の間を縫って魔力が奔り、すぐに答えが返ってきた。 『マスター、北に魔力反応です』 「水銀燈?」 『いえ、何らかのアーティファクトかと』 怪訝に思った凛はその方角を見やって……絶句した。 「あれ、は……」 ■ ――重い。 なんとか再び意識を取り戻した劉鳳が始めに感じたことがそれだった。 ただでさえだるい体に、何かが覆いかぶさっている。 ――なんだ、この匂いは。 煮えたような匂いに顔を顰めながらも、劉鳳は目を開いた。 靄が掛かったような視界でも、なんとか周囲の状況を捉えられる。 煙を上げる地面。光弾によって生み出されたいくつもの小さなクレーター。 ――無数の光弾を切り払った結果へし折れたバヨネット。精根尽きて倒れ込んでいるセラス。 「ッ……!!!」 劉鳳の目が見開かれる。 そうして、はっきりとした視界は……覆いかぶさっていたものの正体をようやく知らせていた。 「た、武……!?」 「……すまねえ、劉鳳兄ちゃん」 劉鳳は、絶句した。絶句するしかなかった。 ジャイアンの体は、血は出ていない。ただ、体中が焼け焦げ炭化していた。だから血は出ない。 そう。始めに感じた異臭は、目の前にいたジャイアンの体が焼け焦げたもの。 そうして、ジャイアンの体は崩れ落ちた。 「キッサマァァァァァアアアアアアアア!!!」 劉鳳が叫ぶ。 絶影が具現化する。第一段階を省略して生み出された真・絶影が敵を討つべく踊りかかる。 だが。 「脆いわね」 『Schwarze Wirkung』 明らかに動きが鈍っていた真・絶影は易々とカウンターを叩き込まれた。 その拳の名はシュヴァルツェ・ヴィルクング。 単純明快に言えば、強力なパンチ。そう、かつて真紅が水銀燈に放ったような。 絶影は粉砕され、劉鳳もまた再び吹き飛ばされた。 それでも、劉鳳は立ち上がろうとすることをやめない。 「許、さん……許さんぞ……ッ!!!」 「蟲みたいね。見苦しいわ。 絆とかいう下らないユメに縋るのはやめたほうがいいわよぉ?」 ただ言葉を繰り返す劉鳳をそう嘲笑って、水銀燈は翼を展開した。 羽根が舞う。 それは魔力によって一箇所に集い……水銀燈の体を超えるほどの巨大な金槌を編み上げた。 『Gigantschlag』 「轟天爆砕ギガントシュラーク――三人揃って光になりなさい」 それは、鉄槌の騎士・ヴィータの魔法。グラーフアイゼンを巨大化させ敵を潰す奥義。 完成の際に守護騎士を取り込んだ夜天の書は、守護騎士全ての魔法の使用を可能とする。 ――例え、主が外道の者であろうと。 そうして、その鉄槌が振り下ろされる――その直前だった。 「ジャイアンーッ!!!」 「ちょっと、待ちなさいって!」 「のび太くん、危ないってば~!」 聞こえた声に水銀燈が目を向けて見れば、そこには走り寄ってくるのび太達の姿。 彼がジャイアンを視認できたのは単純な理由。多数の光弾が、照明の役割を果たしたから。 ジャイアンを殺した魔法であるフォトンランサー・ジェノサイドシフトが同時にこの役を果たしたと言うのは、これ以上ない皮肉である。 「よくも、よくも……」 「のび太くん、下がって!」 「勘違いかもしれないし、襲ってきたのはあっちからかも……」 「うるさーい!!!」 ドラえもんとハルヒの制止を振り切って、のび太が構える。 その手に握られているのは……先ほど水銀燈が落としたジャッカル! それを見て、水銀燈は溜め息を吐いた。馬鹿にしたように。 (全く、目障りな……いいでしょ。全員纏めて消し飛ばしてあげる) どうせ子供にはあんな反動の強い銃はまともに撃てはしまい…… そう判断して、水銀燈は金槌を振り下ろした。 ――否。あくまで、振り下ろそうとしただけだった。 凶器が、その場にいる全てを押しつぶすその寸前。 桜色の流星が、奔った。 「――――Sechs(六番), Funf(五番), Es last frei(解放)!」 『Load cartridge. Divine Buster Extension』 「なっ……!?」 長距離からの狙撃。急ごしらえの鉄槌は撃ち抜かれ、無残に霧散する。 思わず、水銀燈は相手を睨みつけていた。 今、この殺し合いの場においてこの砲撃魔法が使えるのは一人しかいない。 レイジングハートの「マスター」は一人しかいない。 「……ふざけた真似してくれてるんじゃない。覚悟は出来てるんでしょうね」 『敵は最強の魔導書です。注意して下さい、マスター!』 水銀燈の視線の先。満月が輝く空の下で。 赤い外套を纏った魔導師が水銀燈を睨みつけていた。 誰かなんて、言う必要も無い。そう、あの砲撃魔法を使えるのは――遠坂凛ただ一人! (よりにもよって、最悪のタイミングで――!!!) 思わぬ事態に、水銀燈の目が吊りあがる。 だが、怒りを覚えている余裕は無い。銃声が響く。 反動に吹き飛ばされながらも、のび太が銃弾を撃ち出していた。 とっさに防御したものの、その隙に凛が接近してきている。 「Es ist gros(軽量), Fixierung(狙え), EileSalve(一斉射撃)!」 『Flash Move, Divine Shooter Full Power』 「ええいもう……寝てなさい!」 『Photon Lancer』 撃ち出された桜色の魔弾と、それを迎撃すべく奔る金色の魔弾がぶつかり合う。 しかし、数が違った。凛が撃ち出したディバインシューターの数は8、水銀燈が撃ち出したフォトンランサーの数は9。 残った一つはどうなるのか?もちろん、凛に衝突し、盛大な煙を上げるだけだ。 もっとも、水銀燈は手加減していた。まだ本来の姿を晒していない以上、凛を利用することはまだ可能だと判断したのである。 せいぜい気絶して落ちる程度でいい――だからこその、フォトンランサー。 だが――気絶するどころか、凛には傷一つなかった。 「効きはしないわね、こんな程度じゃ」 「……ッ!」 晴れた煙の中から、凛の声が響く。 阻んだのは、凛が新たに纏った赤い聖骸布。かつて、アーチャーが着ていたもの。 それは風に吹かれて、凛の近くまで辿り着いていたのだ。まるで、彼女を導くかのように。 仮にも英霊が着ている物である以上、その効果も半端なものではない。 バリアジャケットの効力と合わせればフォトンランサー一発くらい十分に防ぎきれるし……事実防ぎきってみせていた。 『マスター、彼女は手加減して勝てる相手ではありません!』 「分かってる! レイジングハート、もう一回でかいの行くわよ!」 『All right, Divine Buster Full Burst stand by』 凛の言葉に呼応したレイジングハートが桜色の羽根を展開する。 どちらも手加減する様子は無い。当然だ。 凛には知らない誰かがのび太を襲っているようにしか見えないし、 レイジングハートに至っては暴走した闇の書が暴れているようにしか見えない。 その事実に、思わず水銀燈は歯噛みしていた。相手が水銀燈だと気付いていないのがせめてもの幸運か。 「この役立たず……大人しく待っていればいいものを……!」 『Divine Buster Full Burst stand by』 苛立ちを露にした水銀燈が、凛同様に桜色の魔法陣を投射する。 ディバインバスターは夜天の書にも入っている魔法だ。 撃ち方を見れば水銀燈もデバイスの手助けを借りて真似できる。 ……だが。 「させるかァ! 絶影ッ!!!」 「私達を忘れたら、困るって!」 下から声が響く。 投擲されたバヨネットが水銀燈の頬を掠め、絶影の鞭がその体勢を崩す。 魔法陣から術者は引き離され、集束しかけた魔力はそれで霧散した。 そうして、その間にも凛の詠唱とレイジングハートのカウントは進んでいる。 そこまで来て始めて、リインフォースは水銀燈に口を開いた。 『因果応報だな、ガラクタ人形』 「……ッ!!!」 一瞬で怒りが沸点にまで達したものの、なんとか抑え付けて現状を冷静に分析する。 別に、このまま戦っても負ける気はしない。 下にいる連中はブラッディダガーやプラズマランサーを連発すればいいだけだ。 だが……ディバインバスターを喰らえば死にはしないまでも少しは削られる。 それはまだだ。今は、力を使い果たす時ではない。 そう、水銀燈は判断した。腹立たしいが。 『Eisengeheul』 屈辱に歯を噛み締めながら水銀燈は閃光呪文を起動した。 つんざくような音と激しい閃光が世界を埋め尽くし、周囲の建物の間を強風が吹き荒れていく。 「くっ、これは……!?」 『魔力感知に異常、ジャミングです!』 とっさに目を庇った凛だったが、それでも五感のほとんどがまともに機能しない。 かろうじてレイジングハートの警告が届いただけだ。 しばらくして、やっと視界が戻った頃には…… 地面に置いてあった鞄と共に、黒い天使の姿は完全に消えていた。 「レイジングハート、周囲に反応は?」 『ありません』 「そう……」 そう呟いて、凛はディバインバスターの魔法陣を消した。集束していた魔力も同様に霧散する。 そのまま足元の羽根を羽ばたかせて着地した凛を出迎えたのは、のび太だった。 「お姉さん、ジャイアンが、ジャイアンが……!!!」 「…………」 「治せるんでしょ!? 僕の足みたいに!」 まるでいつもドラえもんにしているように、のび太は凛に泣きついた…… もっとも、普段とは深刻さに相当な開きがあるが。 しばらくして凛が紡いだ言葉は。 「……死者蘇生は魔法よ。私じゃできない」 非常な、現実。 まるでよろめくように、のび太は足を動かして。 「うそだあああああああ!」 「のび太くん……」 そのまま、ジャイアンの亡骸に泣きついていた。 その後には、同じように泣きそうな顔をしているドラえもんと。 ずっと凛を睨みつけている、ハルヒ。 「…………?」 思わず凛が首を傾げる。 実は一度最悪な出会いをしているのだが、長門の背に隠れていたこともあり凛はハルヒをはっきりと覚えていない。 だが、ハルヒは覚えていた。しっかりと。 のび太の泣く声だけが響く気まずい空気が流れる中、それを遮ったのは。 声ではなく、ばたり、と倒れこむ音だった。 「りゅ、劉鳳君!?」 「あ……ちょっと!」 ■ 時系列順で読む Back 「選んだら進め。進み続けろ」 Next 過去の罪は長く尾を引く 投下順で読む Back 自由のトビラ開いてく Next 過去の罪は長く尾を引く 242 POLLUTION(後編) 遠坂凛 251 過去の罪は長く尾を引く 241 闇照らす月の標 劉鳳 251 過去の罪は長く尾を引く 241 闇照らす月の標 セラス・ヴィクトリア 251 過去の罪は長く尾を引く 242 POLLUTION(後編) ドラえもん 251 過去の罪は長く尾を引く 242 POLLUTION(後編) 野比のび太 251 過去の罪は長く尾を引く 242 POLLUTION(後編) 涼宮ハルヒ 251 過去の罪は長く尾を引く 242 POLLUTION(後編) 水銀燈 251 過去の罪は長く尾を引く 241 闇照らす月の標 剛田武 251 過去の罪は長く尾を引く
https://w.atwiki.jp/ifrozenteacherss/pages/514.html
お題『雛苺 泥酔』 カラン… スカイラウンジから夜の街を一望しながら、グラスに注がれたウイスキーを飲み干す水銀燈。 店内には心地よいピアノの音色が流れ、カクテルの甘い匂いが鼻孔をくすぐる。 薄暗い店内は… 雛苺「うえー…まっずいのー…」 水銀燈「…ムードをぶち壊してくれて、ありがとぉ…」 ため息をつきながら、水銀燈は頭を抱える。 実は今日、雛苺の「お酒なんて飲めない」という発言を機に、水銀燈がその楽しさを教え込むため、むりやりこんなムードのあるところへ連れてきたのだ。 …もっとも、雛苺を酔いつぶれさせて、みっともない姿を写真に撮ってやろうというのが、本心だったのだが… 水銀燈「…マスター、カシスオレンジでも作ってあげてくれるぅ…?」 結局、水銀燈は作戦を諦め、度数の弱いお酒を雛苺に勧めた。 雛苺「やー!!ジュースのほうが美味しいのー!!」 水銀燈「声が大きい!!全く…連れてくるんじゃなかったわぁ…」 カシスオレンジを吹きだし暴言を吐く雛苺に、ほとほと呆れる水銀燈。 ため息をつきながら、雛苺にある質問を投げかける。 水銀燈「雛苺…。あなた、果物で何が一番好き?」 雛苺「イッチゴー♪」 水銀燈「…マスター、ストロベリーカクテル…。あと、この子をお願い…。」 そう言うと、水銀燈は別の席の男性の下へと行ってしまった。 どうやら、『獲物』はすぐ罠にかかったらしい。 雛苺「…ふーんだ。水銀燈から誘ったくせに…。あ!これ美味しいの!!ますたー、おかわりー!!」 こうして、雛苺もようやくお気に入りのお酒が見つかったようだった。 水銀燈「あなたといると、ホント楽しいわぁ♪ねぇ、今度渋谷とかで会わなぁい?」 蜘蛛が獲物に糸を巻きつけるように、徐々に相手を罠へ陥れようと画策する水銀燈。 あとは、街に出て欲しいものをおねだりすれば、事は済むはずだった。 が、ここで思わぬ邪魔者が入る。 店員「あの…申し訳ありません…。お連れ様が…」 その言葉に雛苺を見ると、そこには見事に床で眠りこける雛苺の姿があった。 元々、夜10時には寝る体質だったのと、カクテルを何度も一気飲みしたのがかなり効いたようだった。 手際よく、先ほど一緒に飲んでいた男性に『仕事用』のケータイの番号を書いた紙を手渡すと、水銀燈は雛苺を起こしにかかる。 水銀燈「ほーら、さっさと起きて!もう帰るわよぉ…ほーらっ!」 しかし、何度ゆすっても雛苺は起きようとしなかった。 仕方なく、水銀燈は雛苺をタクシー乗り場までおぶって帰ることにした。 満天の星空の下、ふらふらと雛苺をおぶって歩く水銀燈。 最初はそれほど苦でもなかったのだが、徐々に歩くスピードも鈍ってくる。 水銀燈「何で…この私が…こんなことを…」 恨みがましい口調で、水銀燈はつぶやいた。 雛苺「…ごめんね…。水銀燈…。」 水銀燈「なぁに?あなた、起きてたのぉ?」 雛苺「うー…」 水銀燈「…といっても、歩けそうにないわねぇ…。仕方ない、今日は特別よぉ…。」 雛苺「ありがとう…。ヒナ、水銀燈のこと…大好きだよ…」 水銀燈「嬉しいわねぇ…。私も、あなたのこと好きよぉ?なーんか、あなたにだけは警戒心が薄らいじゃうのよねぇ…。子供みたいって言うか…。」 雛苺「もー…ヒナはお子様じゃないのよ?お酒だって飲めるし…」 「悪かったわぁ。」と謝ると、水銀燈はあることを考えた。 私も、いつか子供が出来たら、こんな風におぶって歩くようになるのかしら…と。 そして、「それも、悪くは無いかもねぇ…」とも考えていた。 しかし、思うことはそれだけではなかった。 水銀燈の頭の中に、次から次へとまるで滝のように、色々な考えが浮かんでくる いつまでも1人でいるのも気軽でいいけど、やっぱり最終的には覚悟を決めなくてはいけないのだろうか… そして、この先…そんな人が私に現れるだろうか… 昔は、ただ暇がつぶせればそれでよかった…でもこれからは…。 水銀燈「結婚かぁ…」 かみ締めるように、水銀燈はそうつぶやいた。 完 続き(他の人が書いたやつ)
https://w.atwiki.jp/ifrozenteacherss/pages/273.html
水銀燈「…ん、もうこんな時間かぁ…」 時計を見ると、午前6時45分…そろそろ学校に行く仕度をしなければいけない時間だった。 しかし水銀燈はどうしてもそんな気分になれない。まだ寝たいし、外は寒いし、テスト週間も終わったから、特にやること無いし… 水銀燈「…あーあー…具合悪いんで…今日は学校休ませてくださぁい…。んー…具合悪いんでぇ…。具合…悪いんで…よし…」 何度か確認するようにつぶやくと、また布団にもぐってしまう水銀燈。そこに電話のベルが鳴り響く。相手は薔薇水晶…彼女はいつもこの時間に、水銀燈を電話で起こしていた。 先ほどつぶやいていた言葉をもう一度繰り返し、万全の体制で電話にでる。 水銀燈「…もしもぉし…」 薔薇水晶「銀ちゃん…そろそろ学校に行く時間だよ?」 水銀燈「あー…えっと、具合…」 薔薇水晶「学校…準備できた?」 水銀燈「…いや、だから具合が…」 薔薇水晶「学校…急がないと…」 水銀燈「…分かったわぁ…。」 「最悪」とつぶやきながら電話を切り、急いで準備を始める水銀燈。こんな感じで、今日も水銀燈の1日は幕を開けましたとさ。 おしまい。
https://w.atwiki.jp/rozenrock/pages/101.html
Story ID zOptExS00 氏(14th take) 「Rolero」 Lyrics ID zOptExS00 氏(14th take) いつになく真剣に1通の手紙に目を通す水銀燈の姿が楽屋にあった。 ~こんにちは水銀燈様 私は去年の夏から病院にずっといます。 去年のクリスマスに看護婦さんがくれたローゼンメイデンの 歌が好きになりました。特に水銀燈様が好きです・・~ そのファンレターの差出住所は水銀燈が住むマンションから100mも 離れていない病院からだった「00ホスピタル」口に出してつぶやく。 「あら、どうしたの水銀燈どこか悪いの?」と病院名を聞いた真紅が 心配そうに水銀燈の顔を覗き込む。 「いやぁね~真紅。どこも悪くないわ、それより外の空気を吸ってくるわ」 とレコーディングスタジオから出て行った。水銀燈は知っていた、この 病院は重病患者が多く入っていることを いつもと少し様子の違う水銀燈に気付いた真紅が少し時間を置いて後を 追いかけるとロビーのソファーに深く腰を掛けている水銀燈を見つけた。 「どうしたの水銀燈、あの手紙を見てから様子が変だわ」 無言で手紙を真紅に手渡す水銀燈、真紅も無言で手紙の内容を見る。 水銀燈にこの病院、とくに小児科病棟は重病患者が多いと聞かされる。 「水銀燈、この病院は近いわね、今から行くのだわ」と真紅は水銀燈の 腕を掴みながら言うとそのまま玄関先にあるタクシーに飛び乗った。 「バカねぇ、今消えたらレコーディングはどうなるの?」 「大丈夫よ水銀燈、貴方のパートはほぼ終えてるわ、歌入れは後からでも できるのだわ、それに翠星石は居ないし・・」それを聞いた水銀燈も 「そうねェ」とだけ言うと昼食を食べてくると言い残しフラリと遊びに 出かけた翠星石のことを思い出しているとタクシーは病院前で止まった。 不意に現れた真紅と水銀燈の姿に一時ロビー内が騒然となったが機転を 聞かせてくれたナースがすぐに関係者用のエレベーターまで案内する。 「まさか5分前に貰った電話が本当だったとは・・彼女の病室は」と 案内されたのは一番奥の個室であった。ただ薬で眠っているらしく今回は そっと部屋を覗くだけに留まった。ファンレターどおりのローゼン、特に 水銀燈のファンらしく病室にはポスターやグッズなどが目に付いた。中でも 水銀燈が気に入ってつけているピアスなどが綺麗に枕元に並べてあった。 そこに2人でサインをしそっと病院を後にする。帰りの車内で口にだす。 「水銀燈、あの子は・・」「真紅ぅ、あの子は」2人同時にでた言葉だが 後にはなにも続かなかった。 1週間後メンバーはそろってお忍びで彼女の病室を訪問した。サプライズと いうことで何も知らない彼女は最初は戸惑っていたが水銀燈が彼女のベッド に腰掛て彼女が好きだという曲を弾き他の病室の迷惑にならない程度で 歌った。雛苺がすかさずデジタルカメラのボタンを押す。その後は薬の時間 なので彼女はやがて眠ってしまった。またすぐにメンバーで会いに来る 約束をして・・・・ 3枚目の最新アルバムからハードな曲、可愛いポップス調の歌、切ない バラードを次々と披露していくメンバー。真紅のビブラートと水銀燈の 切り裂くようなチョーキングでステージは終えた。数万の「アンコール」 が数分間続いた後に真っ暗に照明を落としたステージに一人スポットライト の中に水銀燈の姿があった。手にはアコギを持って。 「Rolero」 ~1stアルバムからの曲~ Lyrics Music 水銀燈 ブラインド越しの外は 時の渦に飲み込まれて 銀のピアス 薔薇のシルエット ガラスの微笑み チープな夢に踊らされ 堕ちた天使の羽は折れ 何かを求め 夜の街で舞おう 崩れた天秤の上で Oh 傷だらけの言葉よ Oh 迷路のような魂よ Oh Oh Ah ウソを付いた傷口が奏でる 涙のように 刹那のキラメキに癒されて 黒い羽が遊ぶ 瓦礫の町並みに 微妙なジョークからませて 誘惑に濡れて 月明かりに揺れる私のフィクション シルクの波と ワインの海に 酔わされて Oh 光と影が世界を映し Oh 夢の狭間で消えていく Oh Oh Ah 廻る世界は 出逢いと別れ 背中合わせの物語 いつもならこの曲は薔薇水晶の暗く神秘的なイントロで始まり水銀燈のギター と翠星石のドラムが一気に入る激しくも幻想的な曲なのだが、今回は 水銀燈がアンプラグドで歌っている。元々が幻想的な曲が少し哀愁と 悲しみをミックスさせたような雰囲気を出し、ホール内を満たした。 後にこのコンサートを収めたライブCDのジャケットには雛苺が取った 病院のベッドに腰掛て優しい顔をした水銀燈の写真が使われた。 そのアルバムにはそっと「この曲が好きだといってくれた私たちの 親友に贈ります」とのメッセージが書かれていた。 コラボ作品保管庫へ
https://w.atwiki.jp/ifrozenteacherss/pages/643.html
水銀燈「先生…どうして…?どうして、私じゃいけないの…?」 教師「うーん…はっきり言うと、君より真紅君のほうが面接に受かる可能性が高いんだ…。推薦入試の特待生枠は1名だけだからね…。少しでも可能性のあるほうを推薦したいんだよ…。」 それは、水銀燈が中学生の時の出来事…。家の事情を考えると、水銀燈が高校に進むためには学費免除の特待生を狙うしか方法がなかった。 しかし、教師が下した決断は『真紅』…。 こんなことは、過去に何度もあった。力だけなら私のほうが上のはずなのに、みんな真紅、真紅、真紅…。 そう…あの子は、私の全てを奪い…そして、私に無いもの全てを持っていた。 例えば、それは玩具だったり、洋服だったり…そして父親の存在であったり…。 愛するお父様に捨てられ、いわば『いらない子』として生まれた自分とは違い、蝶よ花よと可愛がられ育つ真紅の姿は、その頃の水銀燈にとって憎しみの対象でしかなかった。 その後、必死に勉強し、一般入試の部で見事特待生の座を射止めた水銀燈。 しかし、そんな彼女を待っていたのは、一部の女子による陰湿ないじめだった。 顔と頭が良い事もさることながら、他人と決して深く接しようとしない水銀燈の姿は、彼女たちにとって『生意気な存在』だった。 最初は陰口から始まった行動も次第にエスカレートし、ついには物を捨てられる、机や黒板にひどい落書きをされる、高層階から物を投げられるといった事が1日に何度も行われるようになっていった。 面と向かってなら決して他人に負けない自信を持つ水銀燈も、姿の見えないものからの暴力には何度も心が折れそうになった。 しかし、そんな時に真紅が声をかけてくれたおかげで、水銀燈は何とか持ち直した。 その時の哀れみの表情…そして弱者をいたわるような同情の言葉…。 そんな言動をしてくれた、真紅への憎しみによって…。 …そして、運命の日は訪れた。 少女A「…しっかし、アイツもよくこの状況で学校に来るよねー。あ…そういえば、言った通りちゃんとやってきた?」 少女B「うん。あいつのノートとか、全部トイレの中に捨ててきちゃった♪」 水銀燈「A…?」 それは、ある昼休みの出来事…水銀燈が行くあても無く、廊下をさまよっていた時の事…その時、不意に何名かの女子が階段の上で、何かについて話しているのが聞こえてきた。 A…それは水銀燈が高校に入って、初めて出来た友達の名前だった。 会話の内容に、胸を締め付けられるような感覚に陥る水銀燈。 『アイツもよくこの状況で学校に来るよね』…?『言った通りちゃんとやってきた?』…?まさかそんな…!? 祈るような気持ちで、水銀燈は彼女たちの会話に耳を傾ける。 …しかし、その思いは天に届くことは無かった…。 少女C「…でもさー、アンタもよくやるよねー。本当の事知ったら、アイツ自殺しちゃうんじゃない?」 少女A「いいのいいの。だって、面白いんだもん。アイツが…あの生意気な水銀燈が苦しんでるトコ、間近で見られるの…♪」 水銀燈「…そっか…。そういう事ね…。なるほど…」 陰に隠れながら、ポツリとそう呟く水銀燈。 この時、彼女の中の何かが…大切な何かが音を立てて崩れ去っていった。 水銀燈「A…ホント、私に近寄らないほうがいいわよ…。あなたまで酷い目にあわされるわよ…」 次の日の放課後、全ての真実を知りながらも、水銀燈はAという少女と一緒に廊下を歩いていた。 少女A「でも…私、水銀燈の事…ほっとけないからさ…。ほら、私たちいつまでも友達だって約束したじゃん?」 白々しくも演技を続ける彼女。 そんな彼女に、水銀燈は優しく微笑みこう言った。 水銀燈「ありがとぉ…」 少女A「水臭いなー、そんなんでいちいち感謝しないでよー。あ、そろそろ次の授業始まるよ!?急がなきゃ!」 そう言って、急いで階段を駆け下りようとする少女。 その背中を、後ろから力いっぱい押すと、水銀燈は小さくこう呟いた。 「…そして、さようなら…」 と。 その瞬間、派手な音を立てて階段から転げ落ちる少女。その少女に向かって、水銀燈はクスクスと笑いながら、こう言った。 水銀燈「あらぁ?意外と丈夫なのねぇ…。ま、そうじゃなきゃ、つまんないけどぉ♪」 少女A「な…何するの…水…」 水銀燈「気安く呼ばないでくれるぅ?あなた…この私に、随分舐めた真似してくれるじゃなぁい?次は、屋上から飛んでみる?」 少女A「…え…!?い、いや…殺さないで…。も…もう、しないから…」 水銀燈「何言ってるのぉ?私がこの半年、どんな思いをしてきたか…あなたが一番良く知ってるじゃなぁい?本当に、今すぐ殺してやりたい気分だわ…でも…」 そう言うと、水銀燈は少女の前髪をつかみ、その顔を引き寄せてこう言った。 水銀燈「…でも、刑務所とか行くの嫌だしぃ…今は殺さないであげる…。でも、死にたくなるように手助けしてあげるわぁ…。さぁ、何日持つかしら…?せいぜい楽しませてねぇ♪」 もはや、痛みと恐怖で失神寸前の少女。そこへ、彼女にとっての救世主がその場に現れた。 真紅「水銀燈…!?あなた、一体何をしているの!?」 水銀燈「…真紅?」 誰かの救いの手…ただの哀れみや同情ではなく、行動を伴ったもの…それは自分が十数年もの間、心の中で求めていたもの…そして誰も差し伸べてくれなかったもの…それが、この裏切り者にはわずか数分で現れた… それは、水銀燈にとって決定的な出来事だった。 水銀燈「…どうしてあなたは、いつも私の邪魔ばかり…。私が苦しんでいる時は何もしてくれなかったくせに、この子の時は随分素直に現れるのね…?」 真紅「な…何を言って…!?私はいつもあなたを救おうとした…!でも…」 水銀燈「そう…なら私を助けようとすることで、優越感を得ていたんでしょう?さぞかし楽しかったでしょうね…。私より、真理的な面で上に立てるんだから…」 真紅「違う!決してそんなつもりじゃ…」 水銀燈「あ…そうそう…。ちょうどいい機会だから、これ返すわね…。」 そういって水銀燈が取り出したのは、バラバラにされたクマのブーさんのぬいぐるみ… それは真紅が以前、水銀燈にプレゼントしたものに他ならなかった。 あまりの事に、真紅も半ば呆然としてしまう。 水銀燈「…もう、私は人の力なんか当てにしない…。全部自分ひとりでやってみせるわ…。そして、全てを叩き潰してあげる…。その間…あなたは、せいぜいお友達と仲良く遊んでなさぁい…。」 そう言うと、水銀燈は真紅に背を向け、その場を後にした。 …この日以来、彼女は他人に対し、ずっと心を閉ざし続けた。 数年後…彼女の運命を変える人が現れる、その日まで…。 完 その数年後のお話
https://w.atwiki.jp/ifrozenteacherss/pages/622.html
水銀燈「ここは…一体…?」 一面に広がる廃墟…その中を水銀燈は一人歩いていた。 水銀燈「誰か…誰かいないの!?」 人を探し歩いて、何分経ったであろうか…。物陰から誰かの話し声が聞こえてきた。 ようやく、この孤独な世界から解放される…と声のする方向へ水銀燈は駆け出した。 しかし、その話を聞いた瞬簡に、彼女の足はそこから動かなくなってしまった。 少女A「…しっかし、アイツもよくこの状況で学校に来るよねー。あ…そういえば、言った通りちゃんとやってきた?」 少女B「うん。あいつのノートとか、全部トイレの中に捨ててきちゃった♪」 水銀燈「まさか…!?やめて…!もう聞きたくない…!!」 思わず耳を押さえ、その場にうずくまる水銀燈。しかし、そんな行為をあざ笑うかのように、少女たちの言葉は水銀燈の耳を切り裂いた。 その少女のうちの1人…それは彼女のよく知る人物だった。 それは、彼女の高校時代の親友だった人…そして… 少女C「…でもさー、アンタもよくやるよねー。本当の事知ったら、アイツ自殺しちゃうんじゃない?」 少女A「いいのいいの。だって、面白いんだもん。アイツが…あの生意気な水銀燈が苦しんでるトコ、間近で見られるの…♪」 …そして、いじめの首謀者だった人… その言葉を聞いた瞬間、水銀燈は悪夢より目覚めた。 肩で息をしながら時計を見ると、時間は午前5時を指している。 高校を卒業して数年、彼女は今もその幻影に苦しめらていた。 水銀燈「うっ…」 そう呻くと、よろよろとバスルームへ向かう水銀燈。 とてもじゃないが、これ以上は寝れそうに無かった…。 少女たちが話していたこと…それは、今から数年前に実際に経験した出来事… そう…あの時も、水銀燈は壁一枚を隔てたところから、事の真相を全て聞いてしまった。 その後、水銀燈は逆に彼女たちを追い詰め、学校から永久に追放した。 悪夢は、それで終わるはずだった…なのに…。 水銀燈「…一体、私はいつまで苦しまなきゃいけないの…?」 シャワーに打たれながら、水銀燈はポツリとつぶやいた。 顔から滴り落ちる水滴は涙なのか、それともシャワーの水なのか、もはや自分では分からなくなってきた。 もういい加減、風呂から出なくては…と、蛇口を閉める水銀燈。その時、ドアのすりガラスに誰かの人影が映った。 水銀燈「誰!?」 その言葉に、侵入者は間抜けな声を上げた。 ?「…ふぇ?」 それは、この場には絶対にいないはずの人物の声だった。 水銀燈「…で、何であなたがここにいるの?それも無断で…」 着替えを済ませると、水銀燈は雛苺に詰問を開始した。椅子に座らされた雛苺は、おっかなびっくり質問に答える。 雛苺「うー…だって、水銀燈…全然学校に来ないから…」 その言葉に驚き時計を見ると、時刻はすでに午前8時をまわっていた。 水銀燈「…時が過ぎるのは早いものね…。そういえば、あの小賢しい姉妹たちはどうしたの?」 雛苺「うーと、今日は薔薇水晶も雪華綺晶も1時間目は授業だから、ヒナが代わりに迎えに来たのよ。で、薔薇水晶から合鍵を受け取って…」 水銀燈「…何で本人に内緒で、そんなの作ってるのよ…。これからは、ちゃんとドアチェーンもしなきゃ駄目ね…。鍵も変えないと…それに…」 雛苺「…水銀燈、何か怖い夢でも見たの?」 水銀燈が、必死に悟られないようにしていた事…。それを、雛苺はすぐに見破ってしまった。 水銀燈「…別に。大したことじゃないわ…。」 この期に及んでも、未だに虚勢を張り続ける水銀燈。そんな水銀燈に、雛苺はこんな話をした。 雛苺「…ヒナもね、よく怖い夢見るのよ…。コリンヌ…この前、雪華綺晶が探してきてくれた子なんだけど、その子が戦争で死んじゃった夢とか、ヒナを捨ててどこかへ行っちゃった夢とか…」 水銀燈「…。」 雛苺「でもね、朝起きるたびにホッとするの。だって、コリンヌは今も友達だし、それにそれを一生懸命探してくれる人や励ましてくれる人も沢山いるんだもの…。」 水銀燈「そう…。で、結局何が言いたいのよ?」 雛苺「あ…でね…水銀燈だって、同じだと思うの。もし何かあったとしても、ヒナや薔薇水晶…それにみんなもいる…。だから、困った時は1人で抱え込んじゃ駄目よ?ヒナが助けてあげるからね…。」 その言葉を聞き、水銀燈はこう返答した。 水銀燈「…助けて『あげる』なんて、偉そうなこと言わないで欲しいわね…。一体何様のつもり?今まで1人で生きて来れたんだから、別に助けてくれなくても…」 そこまで言った段階で、思わず言葉がつまってしまう。 昔は、私に脅えてそばに近寄ろうともしなかった雛苺の口から、そんなことを言われるなんて… 何か、こみ上げるようなものを感じながら、水銀燈はぶっきらぼうにこう言った。 水銀燈「…まあいいわ…。そろそろ行くわよ…」 雛苺「うゆ?どこへ?」 水銀燈「学校…行くんでしょう?別に、行かなくていいなら行かないけどぉ…」 そう言うと、水銀燈は先陣を切って学校へと急いだ。 雛苺に、今の自分の顔を見られないようにすること…それが今、彼女にできる唯一の抵抗手段だった。 完